なが》い間《あひだ》、地球《ちきう》と一|所《しよ》に意味《いみ》もなく、目的《もくてき》も無《な》く廻《まは》り行《ゆ》くやうになるとなれば、何《なん》の爲《ため》に這麼物《こんなもの》が有《あ》るのか……。』冷却《れいきやく》して後《のち》、飛散《ひさん》するとすれば、高尚《かうしやう》なる殆《ほとん》ど神《かみ》の如《ごと》き智力《ちりよく》を備《そな》へたる人間《にんげん》を、虚無《きよむ》より造出《つくりだ》すの必要《ひつえう》はない。而《さう》して恰《あたか》も嘲《あざけ》るが如《ごと》くに、又《また》人《ひと》を粘土《ねんど》に化《くわ》する必要《ひつえう》は無《な》い。あゝ物質《ぶつしつ》の新陳代謝《しんちんたいしや》よ。然《しかし》ながら不死《ふし》の代替《だいたい》を以《もつ》て、自分《じぶん》を慰《なぐさ》むると云《い》ふ事《こと》は臆病《おくびやう》ではなからうか。自然《しぜん》に於《おい》て起《おこ》る所《ところ》の無意識《むいしき》なる作用《さよう》は、人間《にんげん》の無智《むち》にも劣《おと》つてゐる。何《なん》となれば、無智《むち》には幾分《いくぶん》
前へ 次へ
全197ページ中72ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
チェーホフ アントン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング