てゐたが突然《だしぬけ》に。『アンドレイ、エヒミチ今日《けふ》は何日《なんにち》です?』其《それ》から續《つゞ》いて、ハヾトフとブロンヂンのドクトルとは下手《へた》なのを感《かん》じてゐる試驗官《しけんくわん》と云《い》つたやうな調子《てうし》で、今日《けふ》は何曜日《なにえうび》だとか、一|年《ねん》の中《うち》には何日《なんにち》有《あ》るとか、六|號室《がうしつ》には面白《おもしろ》い豫言者《よげんしや》がゐるさうなとかと、交々《かはる/″\》尋問《たづ》ねるので有《あ》つた。
 院長《ゐんちやう》は終《をはり》の問《とひ》には赤面《せきめん》して。『いや、那《あれ》は病人《びやうにん》です、然《しか》し面白《おもしろ》い若者《わかもの》で。』と答《こた》へた。
 もう誰《たれ》も何《なん》とも質問《しつもん》を爲《せ》ぬのである。
 院長《ゐんちやう》は玄關《げんくわん》の間《ま》で外套《ぐわいたう》を着《き》、市役所《しやくしよ》の門《もん》を出《で》たが、是《これ》は自分《じぶん》の才能《さいのう》を試驗《しけん》する所《ところ》の委員會《ゐゐんくわい》で有《あ》つたと初《
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