か》い靜《しづか》な處《ところ》に坐《ざ》して、金《かね》を溜《た》め、書物《しよもつ》を讀《よ》み、種々《しゆ/″\》な屁理屈《へりくつ》を考《かんが》へ、又《また》酒《さけ》を(彼《かれ》は院長《ゐんちやう》の赤《あか》い鼻《はな》を見《み》て)呑《の》んだりして、樂隱居《らくいんきよ》のやうな眞似《まね》をしてゐる。一|言《げん》で云《い》へば、貴方《あなた》は生活《せいくわつ》と云《い》ふものを見《み》ないのです、其《そ》れを全《まつた》く知《し》らんのです。而《さう》して實際《じつさい》と云《い》ふ事《こと》を唯《たゞ》理論《りろん》の上《うへ》から計《ばか》り推《お》してゐる。だから苦痛《くつう》を輕蔑《けいべつ》したり、何事《なにごと》にも驚《おどろ》かんなどと云《い》つてゐられる。其《そ》れは甚《はなは》だ單純《たんじゆん》な原因《げんいん》に由《よ》るのです。「空《くう》の空《くう》」だとか、内部《ないぶ》だとか、外部《ぐわいぶ》だとか、苦痛《くつう》や、死《し》に對《たい》する輕蔑《けいべつ》だとか、眞正《しんせい》なる幸福《かうふく》だとか、と那麼言草《こんないひ
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