に立つてにらみつけてゐます。
「おまいはねてゐたんだね。ばか。」
バルカはだまつてつッ立つてゐます。すると、部屋の中が、だん/\水いろにあかるんで来て、ズボンの影も、緑いろのランプの光も灰いろにうすれ、やがて、壁の中へすひこまれるやうに消えてしまひました。夜があけて来たのです。おかみさんは、赤ん坊をうけとつてお乳をのませると、胸のボタンをはめながらいひました。
「まだ泣いてるよ、この子は。魔がさしてるんだよ。」
バルカは、赤ん坊をまたゆり籠に入れて、ゆすぶりはじめます。部屋の中には、もうなんの影もないので、まぼろしがのりうつゝてくることもありません.そのかはり、たゞ、ねむくてたまりません。バルカはねむ気をおひはらはうとして、籠のはしに頭をおしつけて頭で籠をゆすぶります。それでもすぐにまぶたがたるんで、頭がおもくなつて来ます。
「バルカ、ストーブをたきつけろい。」
戸のむかうから、親方がどなりつけます。さあ、いよ/\バルカの仕事がはじまりました。バルカは、まきをとりに、物置へかけだします。それがうれしくてたまりません。かけたりあるいたりしてゐれば、じつとすわつてゐるときよりも、ねむ
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