れた。で、よしんば僕が……
ドゥニャーシャ どうぞそのお話は、のちほどに願いますわ。今はあたしを、そっとしておいてちょうだい。だって、空想してるんですもの。(扇をもてあそぶ)
エピホードフ 僕は毎日不仕合せにぶつかります。しかし僕は、あえて言えばですな、ただ微笑しています、いや、ハッハッハと笑ってさえいます。
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広間からワーリャ登場。
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ワーリャ お前まだここにいたの、エピホードフ? ほんとに、なんていい加減な人間だろう。(ドゥニャーシャに)お前もあっちへおいで、ドゥニャーシャ。(エピホードフに)玉突きをしてキューを折ったかと思えば、お客さま面《づら》をして客間を歩きまわったりして。
エピホードフ こう申しては失礼ですが、あなたからお小言を頂く筋合いはありません。
ワーリャ 小言なんか言ってやしない、話をしているんだよ。することと言ったら、仕事はそっちのけで、ふらふら歩きまわることばかり。せっかく執事をやとっても、なんのためやら――わかりゃしない。
エピホードフ (ムッとして)わたしが仕事を
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