花のようだ、ですって。
ヤーシャ (あくび)無学な連中だ……(退場)
ドゥニャーシャ 花のようだ、ですって。……あたし、そりゃデリケートな娘だもので、うっとりするような言葉が大好き。
フィールス そろそろおっぱじめるな、お前さんも。

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エピホードフ登場。
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エピホードフ ああ、ドゥニャーシャさん、あなたは僕《ぼく》を見るのが、さも厭《いや》そうですね……虫けらかなんぞのように。(ため息をつく)あわれ人生よ、だ!
ドゥニャーシャ 何のご用ですの?
エピホードフ もちろんそりゃ、あなたの方が正しいのかも知れない。(嘆息する)しかし無論ですな、その……ある観点からすると、あなたという方は、まあ率直に言わせて頂くとですな、要するに僕を、こんな精神状態に落し入れてしまったと、あえて言わざるを得んのです。僕は自分の宿命を承知している。僕の身には、毎日かならず何かしら不仕合せが起るし、僕はもうとうに馴《な》れっこになって、おのれが運命を微笑をもって眺《なが》めています。要するにですな、あなたは一たん約束さ
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