ですか!
ラネーフスカヤ いや、いや、いや、それを言わないで……(両耳をふさぐ)
トロフィーモフ あいつは碌《ろく》でなしです、それを知らないのはあなただけだ! あいつはケチなやくざ野郎で、虫けらみたいな……
ラネーフスカヤ (ムッとするが、じっとこらえて)あなたは二十六か七のはずね。だのに、まるで中学の二年生みたい!
トロフィーモフ かまやしません!
ラネーフスカヤ もっと大人にならなけりゃ駄目よ。あなたの年になれば、恋をする人の気持ぐらい、わからなければね。そして自分も恋をしなくてはね……夢中になってね! (腹だたしげに)そうよ、そうですとも! あんただって、純潔なんかあるもんですか。ただ気どってるだけよ、滑稽《こっけい》な変り者よ、片輪よ……
トロフィーモフ (呆気《あっけ》にとられて)何を言うんだ、この人は!
ラネーフスカヤ 「恋愛を超越してる」ですって! 超越するどころか、あんたはうちのフィールスの言うように、この出来そこねえめ、ですよ。その年をして、恋人ひとりいないなんて! ……
トロフィーモフ (仰天して)こりゃ、ひどい! 何を言い出すんだ※[#疑問符感嘆符、1−8−77
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