ダム・ロパーヒン!
ワーリャ (怒って)万年大学生! 二度ももう、大学を追い出されたくせに。
ラネーフスカヤ 何をおこるのさ、ワーリャ? この人が、ロパーヒンのことでお前をからかったって、それがなんです? 嫁《い》きたければ――ロパーヒンの嫁になるがいいわ。あれは見どころのある、いい人間だもの。いやなら――嫁《い》かないがいいのさ。誰もお前を、束縛しやしない。……
ワーリャ わたし正直に言えば、このことは真剣に考えていますの。あの人はいい人間で、わたし好きですわ。
ラネーフスカヤ じゃ、嫁《い》ったらいいじゃない。何を待つことがあるの、気が知れないわ!
ワーリャ だって、お母さん、自分であの人に申込みをするわけには行きませんもの。現にこの二年というもの、みんながわたしに、あの人のことを言うの、寄ってたかってね。ところがあの人は、黙っているか、冗談にまぎらしてしまうかですの。それもわかるわ。あの人はますますお金ができて、事業で忙しくて、わたしどころじゃないのよ。もしもわたし、お金があったら、――たとえ少しでも、せめて百ルーブリでもあったら、わたしは何もかもうっちゃって、身をかくしてしまう
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