すが……。しかし、相変らずご立派ですなあ。
ピーシチク (息をはずませながら)むしろ器量があがられたくらいだ。……お召物もパリ好みでな……わしらなど、どだい目がくらんで、まともにゃ拝めんほどですわい……
ロパーヒン あなたのお兄上、このガーエフさんは、わたしのことを下司《げす》だ、強欲だと言われますが、そんなこと、わたしは一向平気です。なんとでも仰しゃるがいい。ただわたしの望むところは、あなただけは元どおりわたしを信用してくだすって、そのえも言われぬ、しみじみしたお眼《め》を、従前同様わたしに注いで頂きたいということです。いやはや、思いだしてもゾッとする! うちの親父《おやじ》は、あなたのお祖父《じい》さんやお父さんの農奴だった。ところがあなたには、ほかならぬあなたという人には、わたしはいつぞや一方ならぬお世話になったことがある、それでわたしは、一切をきれいに忘れて、あなたを肉親のようにお慕いしています……いや、肉親以上にです。
ラネーフスカヤ わたし、じっとしちゃいられない、とても駄目《だめ》……(ぱっと立ちあがって、ひどく興奮のていで歩きまわる)嬉《うれ》しくって嬉しくって、気がち
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