げ]
アーニャとドゥニャーシャのほか、一同退場。
[#ここで字下げ終わり]
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ドゥニャーシャ やっとお帰りになった、……(アーニャの外套と帽子をぬがせる)
アーニャ わたし途中四晩も眠れなかったの……今じゃもう、こごえあがっちまったわ。
ドゥニャーシャ あなたがたがお発《た》ちになったのは、大斎《たいさい》のころ([#ここから割り注]訳注 復活祭に先だつ七週間の精進期間で、年によって違うが、およそ二月初めから三月初旬までの間になる[#ここで割り注終わり])で、まだ雪がふって、ひどい凍《い》てつきようでしたが、今はまあどうでしょう? 可愛いお嬢さま! (笑って、アーニャにキスする)待ち遠しかったですわ、大好きな、可愛《かわい》いお嬢さま。……早速ですけど、あたしお話がありますの。一分間だって待てませんの……
アーニャ (だるそうに)また、なんの話……
ドゥニャーシャ 執事のエピホードフが、復活祭のあとで、あたしに結婚を申込みましたのよ。
アーニャ いつも、おんなし事ばかり……(髪を直しながら)わたし、ピンをみんな落してしまったわ。……(疲れきって、よろよろしている)
ドゥニャーシャ どう考えたらいいか、困ってしまいますわ。あの人、あたしを愛してますの、とても愛してますの!
アーニャ (自分の居間のドアをのぞきこみ、なつかしそうに)わたしの部屋、わたしの窓、まるで旅行なんかしなかったみたい。わたし、うちにいるのね! あした朝おきたら、すぐ庭へ出てみよう。……ほんとに、ちょっとでも寝られたらよかったのにねえ! 道中ずっと眠らずじまい、なんだかとても気にかかって。
ドゥニャーシャ 一昨日《いっさくじつ》、トロフィーモフさんがいらっしゃいました。
アーニャ (嬉しそうに)ペーチャが!
ドゥニャーシャ お風呂場《ふろば》で寝てらっしゃいますよ、あすこに陣どってしまってね。お邪魔になっちゃ悪いからな、ですって。(懐中時計を出して見て)あのかた、お起しするといいんですけど、ワルワーラさま([#ここから割り注]訳注 ワーリャの正式の名[#ここで割り注終わり])がいけないと仰《おっ》しゃるものですから。お前、あの人を起すんじゃないよ、って。
[#ここから2字下げ]
ワーリャ登場、バンドに鍵束《かぎたば》をさげている。
[#ここで字下げ終わ
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