べからくその余暇を社交にお割《さ》きになるべきだってね。そうじゃないかい、ねえお前?」
「こちらへお掛け遊ばせな」とヴェーラ・イオーシフォヴナは、お客を自分の傍へ坐らせながら言った。「あなたこの私に慇懃《いんぎん》をお寄せ下さいますでしょうねえ。宅は焼餅《やきもち》やきですの、あのオセロなんですのよ。でも私たち、宅に何一つ気《け》どられないようにうまく立ちまわりましょうねえ」
「ええ、この甘ったれの雛《ひよ》っ子さん……」イヴァン・ペトローヴィチは優しくつぶやいて、妻の額《ひたい》に接吻《せっぷん》をして、「あなたは実によい時においでになったんですよ」とまた客の方へ話しかけた。「わが最愛の妻が一大長編を書き上げましてね、今日それを朗読することになっていますので」
「ちょいとジャン」とヴェーラ・イオーシフォヴナが良人《おっと》に言った。「|〔dites que l'on nous donne du the'.〕《おちゃをそういってくださいましな》」
 スタールツェフはエカテリーナ・イヴァーノヴナにも引き合わされた。これは十八になる娘さんで、すこぶるお母さん似の、やっぱり瘠せぎすな愛くるしい
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