人だった。その表情はまだ子ども子どもしていて、腰つきも細っそりと華奢《きゃしゃ》だったが、いかにも処女《おとめ》らしいすでにふっくらと発達した胸は、美しく健康そうで、青春を、まぎれもない青春を物語っていた。さてそれからみんなでお茶を飲んで、ジャムだの蜂蜜だのボンボンだの、口へ入れるとたんに溶けてしまうすこぶるおいしいお菓子だのを風味した。夕暮が迫るにつれてだんだんとお客が集まって来たが、その一人一人にイヴァン・ペトローヴィチは例の笑《え》みこぼれるような眼を向けて、こう挨拶するのであった。――
「ようこそどうぞ」
やがて一同そろって客間へ通って、すこぶる真面目くさった顔つきで席におさまると、いよいよヴェーラ・イオーシフォヴナが自作の小説を朗読するのだった。彼女はこんなふうに始めた。――『凍《い》てはますますきびしくなって……』窓がみんな一杯に開け放してあるので、台所で庖丁をとんとんいわせる音が聞こえ、玉ねぎを揚げるにおいが漂って来た。……深々とやわらかなソファはいい坐り心地だったし、客間の夕闇のなかには灯《あか》りがいかにも優しげに瞬《またた》いていた。そして今この夏の夕ぐれに、往来
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