ことを申すのは、今こそ、われわれは、一斉に、不断はなかなかやれないことをやらうといふ勇気と自信とが湧いてゐるからであります。
 決死の覚悟といふことを云ひますが、身命をなげうつのは必ずしも外敵を前にひかへた瞬間だけでなくてもよろしい。国を危くする敵が、若し、われわれの不覚な心のうちに宿つてゐるならば、これと刺しちがへて死ぬのが忠義の道だと私は信じます。日本を、かくあらねばならぬ姿に返すために、お互は、先づ自分自身を鞭うちませう。
 年を取つたものは、習慣を改めるのに非常に骨が折れ、或は努力しても効果がない場合さへあります。私は、やゝ年を取つたものゝ部類でありますが、同年配以上の方々には、決して要求がましいことは申しません。たゞわれわれ年配の者でさへ、次に来るべき者のために、自分を叩き直したい念願でいつぱいなのは、敢て私一人だけではないと信じます。
 私は、先づ、自分で実行してゐることについて、主として青年諸君にご相談申したいのですが、なんでもないことで、若しそれが諸君のすべてによつて行はれたら、その日から、日本は、それだけでもうわれわれの望むところへ一歩近づいたと云へるやうな、ほんの、
前へ 次へ
全9ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング