、地上○○部隊の攻撃に協力しつゝ、なし得れば……」
若い部隊長の声は、凜然としてゐた。
「自分は××中尉機に同乗する。終りツ」
操縦士の間で、細かい合図の方法などが打ち合はされた。
油断をしてゐると、○○機がいつ飛び出すかわからないので、絶えずその方向へ眼をくばつてゐなければならぬ。藍色のいくぶん華車な胴体が、遠くからでも見分けられるのである。
○○部隊は、一機一機、同じ間隔をおいて順々に、離陸した。それがやがて、規則正しい編隊となつて、南西へ、南西へ。機上の人々の姿がいつまでも私の眼に残つてゐた。
さあ、こゝでどれだけ時間を過したらいゝのか? 出発が明日に延びるやうなことになるまいか?
もう昼も近く、腹は遠慮なく空いて来る。
私はしかたがなく、催促顔を見せに行つた。操縦士は、飯盒の弁当を食つてゐるところである。
「どうも痛くていかん。歯だか耳だかわからないんだ。とにかく、間をおいて、キリキリキリキリツと来るんだ」
そばの機関士に話しかけてゐる。見ると、どうやら熱のありさうな顔色である。
今朝から二度も○○まで往復したといへば、相当に疲れてはゐるであらう。この人がまた
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