会心理としてのひとつの重要な問題がこゝにある。そして、日本の知識階級は、たしかに「文弱」に流れてゐるといふことを遺憾ながら私は認め、自動車が飛行場へ着くと、私には一瞥もくれず立ち去つた例の将校の後姿を、しばらく苦笑を以て見送つた。
焼芋
飛び出す○○機、舞ひ降りる○○機、場内の空気はどよめき立つてゐる。
一瞬、捲き起つた砂煙が徐々にはれると、隅々に張りめぐらされた天幕の内外に、慌ただしい地上勤務兵の活動が見え、着陸点を示す紅白の吹き流しが静かに朝風に翻つて、○○大集団の基地らしい威容を感じさせる。
○○機は何処から出るのか、それを確めるために、私は一つの天幕に近づいた。
将校が五六人、その入口に佇んで空を見あげてゐる。いま離陸したばかりの一編隊がもう山の彼方に消え去らうとしてゐた。その時、私は、彼等のうちの一人に問ひかけた。
「天津行きの○○機に乗りたいんですが……」
「あ、新聞の方ですね。まあ、こちらへ……」
まだ時間があると思つたので、私は指されたアンペラの小屋のなかへはひつて行つた。見ると、真ん中に、土を掘つて炭火をおこし、その前へ椅子を引寄せてどつかと腰
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