告げ、K副官に謝意を表し、H部隊長の健康を遥かに祈りつゝ、司令部の門を出た。
 さて、これからの行動は?
 承徳の攻撃がまだ始まらぬとすれば、寧ろ井※[#「こざとへん+徑のつくり、第3水準1−93−59]まで進出して、娘子関の嶮を一目見ておくのもよからう。が、交通の便はどうなつてゐるか? それを確めておけばよかつた。
 ○○部隊にくつついて邯鄲あたりまで行つてみるのもまたひとつの方法である。しかし、これは往復一週間をみておかねばならぬ。予定通りにいつても、それでは北京に寄る暇がなくなる。こゝまで出掛けて来て北京を素通りといふのはちと話にならぬ。
 なんとかして大砲の音ぐらゐ聞けないものか。
 ふとこの時頭に浮んだのは、○○機で戦線の上を飛ぶことができたらといふことであつた。
 それには、○○部隊長がこの辺にゐる筈だ。是非会つて相談してみよう。従軍記者の資格は多分ものを言ふであらう。同期生の誼みで更に無理が利きはすまいかと、私はひとりぎめにきめてしまつた。

     志士の群

 石家荘の大通りを――大通りと云つても道幅は三間あるかないかだが――北へちよつとはひると、右側に「靖郷隊本部
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