、時々、ちらちらと私の方へ好奇的な眼を向けてゐた。
 主人は子供のことばかりに気をとられ、抱き上げたり、寝かせたり、菓子を与へたり、頭を撫でたりしてゐた。やがて、ズボンを脱がせ、床の上の痰壺へ小さな尻をあてがつて大便をさせはじめた。
 云ふまでもなく、私の眼の前である。私は廊下へ出たくもあつたが、また、それも惜しい気がして、ぢつと網棚の一隅を睨んでゐた。
 用事がすむと、痰壺は廊下へ持ち出された。細君が何やら小声でもう一人の女に囁いた。主人が帰つて来て、袋から梨を取り出し、女たちはそれを一つづつ分けた。
 主人は、私の前へも二つ梨をおいて、食へとすゝめるのであるが、私は、遠慮した。
 天津でこの一家族は私に丁寧な会釈をして降りた。
 塘沽で日が暮れ、昌黎で夜が明けた。
 葡萄と梨の産地と見え、プラツトフオームはさながら果物市場である。大きな籠に積みあげた葡萄をめいめい手に提げて帰つて来る。
 秦皇島は砂丘のなかに建てられた明るい街である。海上に浮んだ無数の船は、みな英国の旗をたてゝゐるわけではない。時代の転換を暗示する風景である。
 いよいよ山海関だ。万里の長城の一端があつけなくそこで
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