を聴かせていたゞけたら、大へんうれしいと思ひます」
 通訳者の迷惑も顧みず、私はひと息に喋つてしまつた。
 が、どうやら趣旨だけは通じたと見え、劉氏が徐ろに口を開いた。この人は、たしか、上海に於ける左翼運動のリイダアの一人であつたとか、その後転向して反共運動に投じたのだといふ話を前もつて聞いてゐたから、私は、その雄弁のお里が知れる気がして興味を覚えた。熱情を織りまぜて理論を運ぶことになれたあの一種の型は、世界共通とでも云ひたいほどである。通訳がところどころにはひる。それでもう訳したのかといふ、納まらぬ顔附がありありと読みとれる。が、彼は続ける。
 日本語に移された部分について云へば、この座談会はまつたく散漫至極なものであつた。
 二三の質問を発しはしたが、私の訊きたいことはまともに答へられず、僅かに日本語達者な柯、関両氏がその親日的辞令をもつて、あたらずさはらずの意見を述べるだけである。

     デリカシイについて

 座談会を切り上げて、一同食卓につく。扉を距てたホールでは、ダンスがはじまつてゐる。
 フランス人の給仕頭が平服のまゝで酒の注文をきゝに来る。
 速記者の※[#「にん
前へ 次へ
全148ページ中137ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング