いに挙手の礼をして立ち去つた。
 私が空腹を訴へると、O氏はかねてそのつもりでゐたらしく、
「そこに※[#「にんべん+方」、第3水準1−14−10]膳といふ飯館《フアンカン》があります。これはつまり、宮廷風庶民料理を専門にやる店で、例の西大后の好みから特に宮中でさういふ献立を作らした、それがこの店に伝はつてゐるのです。ひとつ試してごらんなさい」
 といふわけであつた。
 吹きさらしの前庭に、いくつかの食卓が並んでゐて、公園のレストランとしての趣をそなへてゐる。
 軽いランチではあつたが、いく品かの菜汁にそれぞれの工夫を凝らしてあることがわかつた。しかし、料理に関する限り、私は形容の言葉に窮するから、あとはどなたかよろしく。
 日が傾くと、水が近いせゐでもあらうか、風がやゝ冷たくなつて来た。私は外套の襟を立てゝ歩きだした。樹立のなかにゐて、木の肌のなんと目立たぬ色をしてゐることか。幹は悉く小枝と葉のひろがりに席を譲つたのである。自然が常に煙つてゐるやうに見えるのはそのためであらう。
 自動車は裏町へさしかゝつた。土地の起伏につれて、波形につゞく白壁の美しさ。曲りくねつた凸凹道も、こゝでは
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