を写しにかかつた。われわれは邪魔にならぬやう席を立たうとすると、そのまゝでをれといふ合図をする。
「君たちは天津からやつて来たのか?」
 とフランス語で問うてみたら、
「さうだ」と答へた。
 更に、私は、訊ねた。
「われわれが日本人だといふことを君は識別し得たか?」
「もちろん」
 と、その水兵は愛想のいゝ返事をした。そして言葉をついだ。
「われわれは今度の事変で、こつちへ送られて来たのだが、君たちの国へも是非行つてみたい」
「君たちの艦長がそれを欲しさへすればいゝのだからね」
 と云つて、私は笑つた。すると、その問答の意味を仲間に伝へたらしく、みんな声をたてゝ笑つた。
 私は調子にのつて、
「僕は欧洲大戦の直後、伊太利へ旅行したことがあるが、南部チロルのメランといふ町は、丁度、君たちの国の軍隊が占領してゐて、君たちが今、天津や北京でみるやうな光景を呈してゐた。チロルの平和な自然と国民的デモンストレーシヨン……。軍楽隊のマーチがいつまでも耳に残つてゐるよ」
 通訳がすむと、一同は、大きく眼を見張つていくどもうなづいてみせた。気持のいゝ青年たちであつた。
 船が対岸へ着くと、彼等はめいめ
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