見せ場」「聴きどころ」といふやうなところへ来ると、あちこちで、「好々《ホーホー》」と声がかゝる。
椅子席の前に、狭い板が渡してあつて、それが卓子の代りになる。売子が茶を持つて来る。菓子や果物を置いて行く。いらぬと云つてもなかなか承知しない。
舞台では、三国志の一節が物語られてゐる。「撃鼓四馬曹又は群臣宴」といふ外題である。女優が髭の生えた男の役をやつてゐる。
舞台裏から平気でこつちをのぞき込んでゐるものがある。それどころではない。舞台の隅へはみ出して来る奴がゐる。道具を出したり引つ込めたりする男が、早く云へば小道具方が、まるで自分の家を片づけるやうな歩きつきで、役者の間をうろつき廻る。
ひと節歌ひ終ると、役者は後ろ向きになつて差出された湯呑みの湯を一杯飲む。口髭のあるのは、その口髭を頤の下へ外すのが見える。女の役は、それでも、袖屏風をつくる。
支那芝居の講釈は怪しいからやめる。名優と云はれてゐる二三人は、なるほど、役者としての魅力で私を惹きつけた。程硯秋といふ女形は、N氏に従へば、「現在北京で聴かれる名旦中での第一人者、その名海外に知られてゐることは梅蘭芳に次ぐ」とのことだが
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