、流行のマニフェスタシヨン、ヴアニテエの相互満足が行はれる場所なのです。
美しい性のいはゆる「芝居行きのお化粧」はまあ別として、「処で、今度僕の方の会社ではね……」と云つた話の調子から、「昨夕の放送曲目は、なつちやいないぢやないか」などゝいふ物腰に至るまで、さては、「僕も読んだよ、一寸いゝ処があるね、あれならまあ褒めてやつてもいゝ」――「こゝの洋食は近頃うまくなつたよ。僕は認めてやるよ」
みんな、少しづゝ、上気《のぼ》せるんですね。
が、まあ、それもいゝとしませう。
どうせ、幕間が舞台より面白かつたりしては大変ですから。
尤も、幕間といふものが無ければ、芝居には来ない連中があるかもわからない。
それほどでなくとも、幕間なるものが無いとなると、自分が芝居を観に来てゐるといふことを、つひ忘れてしまふ連中があるかもわからない。少くとも、芝居を見に来たやうな気がしない連中があるかもわからない。
僕なども、実を云へば、二時間も続け打ちに舞台を見せられてゐては、どうにも疲れてしやうがないのですが、幕間があるなら、一人で観てゐるより連れがあつた方がいゝ。話などはしなくても、幕が下りて
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