の……××さんのなんかは如何でせうか」
「如何でせうかぢやない。××君のものがやつて見たいんですね」
「はあ」
「××君のなんです、作品は」
「なんでもかまひませんの。あの活動になつてをります……何んとか申しましたね、カフェーの女給が主人公で……」
「そんなのがあつたか知ら……」
「さうさう、あれは××さんぢや御座いませんでした」
これもいけない。
「君は今迄舞台に立つたことはありますか」、
「えゝ一度、××小劇場で群集の一人になりました。それから……」
「よろしい。君は、どれくらゐ修養したらほんとの役者になれると思ひます」
「△△さん(新劇俳優の名)は半年もしたらつて云はれましたけれど、僕、それぢや駄目だと思ひます」
「ふん」
「ゴオヅン・クレイグは十年間劇場を閉鎖しろと云ひましたが、全くそれくらゐの覚悟は必要と思います」
「君は、その覚悟なんですか」
「先生たちもその覚悟でおいでゝすか」
「僕達には僕達の計画があります。ぢや、君は今までの新劇俳優を標準にして、たゞ舞台に立ちさへすればいゝ、相当な役がつきさへすればいゝと云ふんではないんですね。君は……それなら……」
「一寸お尋ねし
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