の目標といふものは掴むことができない、と、さう思ひますね。
若し今擁護すべき文化がありとすれば、それは日本の歴史が創り出したものですから、それはこれからの歴史がそれ以上のものを創り得る筈だし、少くともそれ以上のものを創れるといふ確信があつていゝと思ひますね。消えて無くなるものでないから……。
たゞ一つ必要なことは、なんですね、われわれがこれが文学だといつてゐるやうな文学がね、今仮りにその現在の政治の文化性のないことのために、幾分何かしら圧迫を感じてゐる事実があるとすれば、これは、擁護といふ形でなくて、本当に教へなければならんと思ふのです。文学といふものはかういふものだといふことを、これを分るやうに、いはゆる文学に無関心な人たちに教へる、要するに、一つの表現を、文学者がぜひ見つけ出さなければならぬときだ……。これをやはり努めなければ、恐らく、文学をまた再び本当に輝かす時に、非常に骨が折れるのですね。
それで僕がちよつと感じたことは、文学の側衛的任務といふことです。これは軍隊の言葉ですが、文学で前衛といふことは今まで云はれてゐた。今、国防国家として前衛的な文学が頻りと要求されてゐる。
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