に期待するものであります。
さて、こゝで、徐々に形づくられて行く国防国家といふ見地から、あらゆる文化部門の動員といふことが考へられる。これはどうしても必要である。戦争と文化と対立するものゝやうに云ふのは、一を知つて十を知らないのであつて、若しさうならば、かういふ時代には、国民の文化活動を悉く封じてしまへばいい。ところが、反対に、国家の一大危機に臨んで、国家自体が、文化の総動員を思ひ立つといふところに、大きな意義を私は見出すのであります。
三
第一に私は、かういふことを考へる。
国民の一人一人は自分の仕事をもつてゐる。仕事と云つてもピンからキリまでありますが、その仕事は、単に生計を立てるため、俗に云ふ「食ふため」といふだけのものもあり、なかには、仕事そのものゝ社会的、或は国家的役割をはつきり標榜し得るものもある。「食ふため」だけと称する仕事のなかにも、それが社会にとつて、国家にとつて、なくてはならぬといふ性質のものもあり、社会或は国家のためと銘うつた仕事でも、これによつて、自分と自分の家族とを養ふ限り、職業と考へて差支へないものもある。
平時は、自分の職業といふ
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