。フランスでは、すべて芸術の先駆的傾向を、アヴァン・ギャルド即ち、前衛、或は先駆と名づけてをります。
現在に於る文学の前衛的任務も決して忽せにはできません。前に申しましたやうな、狭い意味での政治的役割は、ほゞこれに当るものだと思ひます。しかし、これは、すべての文学に求めることは困難なのであります。なぜなら、国民のすべてに、政治家たれと要求することは、いかに政治万能の時代と雖も無理な話であります。第一、その必要もありません。そもそも政治家といふものには、それ相当の資格があり、さういふ資格のない自称政治家の言論や行動ほど国を危くするものはありません。
文学者は概して、政治家としては不向きにできてをり、また自らもそれを知つてをります。殊に、専門の政治家や官吏にできることを手伝ふ余裕もない。ただ、われわれがしなければならぬと思ふこと、しかも、主として創作活動を通じてなし得ると思ふことは、第二の側衛的任務であります。
文学の側衛的任務とは、前衛に対して本隊の側背を護り、前面の敵に気をとられて、不意に側面から攻撃を受けるのを防止する任務であります。国防国家として、この任務はまた極めて重要で、
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