と云ふ三つの点に帰します。なるほど、フランス語のこの優越性はたしかに世界の認めるところとなりましたが、しかしその純化されたことが今のやうに単純で優雅で明晰な言葉となつたゞけ、その反面に於いて、フランス語の致命的な弱点を生みはしなかつたかといふ意外な疑問を投げかけてゐるのが、十八世紀のある学者であります。それは十八世紀になつて、隣のドイツの知識がフランスにはいつて来た。さうしてドイツ語との比較が試みられた結果、フランス語はなるほど非常に単純化され、また優雅で明晰ではある。しかし、どちらかといふと固定した状態、或は継続する状態を写すのに適した言葉になり過ぎて、動く状態を写し伝へるのには、どうもあまり適しない言葉になつたといふのです。これは隣のドイツの言葉が非常にダイナミツクである。動きに富んでゐる。それに比してフランス語は一種の力に欠けてゐると公平なところをみせたのであります。それに対して、フランス語の一途な擁護者は、「なるほどドイツ語のダイナミツクなところは認める。その原因は何かといふと同義語が多いことである。同義語の数をフランス語は極度に制限した。またドイツ語は非常に動詞の数が多い。色
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