ことを非常に容易にしたのだと云ふ議論は強ち牽強附会ではないと私は思ふのであります。この時代に、御承知のやうに例のアカデミーが創立せられました。さうして、このアカデミーがマレルブの仕事を受継いでフランス語の標準化といふ事業を完成しました。辞書の編纂、文法の確立であります。そのアカデミーの最初の討論がまた非常に興味があるのでありますが……先づ最初討論の議題となつたことは、フランス語の隣国の言葉に対する優越を確保する方法如何といふことでありました。これは当時フランスは領土的にも所謂国威を発揚した時代でありまして、フランス語が隣国に侵入する機会も多く、また隣国人が自から進んでフランス語を習得するといふことをどうしても考へなければならぬ時代であつた。しかしながら、単に武力を背景としてフランス語を習はせるとか、或は利害の問題からこれを学ぶといふだけでは心細い。なんとかして、フランス語自体の優越性によつて隣国人を惹きつけねばならぬ。フランス語の美しさに対する一種の憧れをもつてこれを学ばうとするやうに仕向ける必要がある。当時のフランスの学者達はかう考へたのです。非常な達見だと思ひます。その中の一人で、
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