として浮び上つて来たのである。
 従つて今日までは、文化的専門領域内に於ける技術の習得が一つの職能であり、また職業であつた。しかるに今後は、さういふものも依然あつて良いけれども、同時に新しい二つの方向が考へられなければならなくなつた。
 一つは、文化各専門領域の政治的運営といふ方向、即ちそれぞれの領域を国家目的に応じ如何に進歩発展せしむべきか、またこれを如何なる理念によつて統一すべきかといふ問題等々に関し、或ひは国家行政の面に、或ひは経済の面に働きかける一つの仕事がこれである。
 もう一つは、それぞれの専門領域を国民生活に結びつけ、所謂「文化」と「生活」との有機的な交流をはかり、これによつて各専門領域の発展を飽くまでも生活から遊離せしめず、また国民生活の文化水準を高めるといふ仕事がこれである。
 この二つの仕事の方向は今後益※[#二の字点、1−2−22]広範囲にわたつて研究され、またその結果が実践に移されて行くことと思ふが、現に今日まででも、たとへば学術の領域では学術振興会とか、科学動員協会とか、いふやうな機関が、その役割を果しつゝあるし、芸術の分野に於ては、例へば最近結成された、日本
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