様である。

[#7字下げ]三[#「三」は中見出し]

 如何なる職業でも、それが、何等かの意味で人間生活に関りがある以上、必然的に文化的意義をもつものであることは云ふまでもない。それと同時に如何なる職業でも、それに従事する者の文化的感覚が、職業そのものの機能使命を完全に果し得る重要な要素であることも亦疑ひない。
 しかしながら前にも述べたやうに、狭義の文化的職能乃至は職域といふものが考へられる。これを極く大ざつぱに拾ひ上げて見ると、学問、芸術を専門とするものをはじめとして、これを直接利用し、または対象とする業務、即ち言論、教育、宗教、医療・厚生、公務・法務、出版・報道、特殊技術、娯楽、等である。
 従来文化関係の職域といへば、大体以上のやうな範囲が頭に浮ぶわけであるが、今日では特に、以上のやうな部門をそれぞれ専門的な立場で独立したものと考へることは出来なくなつて来た。勿論、専門領域としての確固たる特殊性はこれを認めなければならないけれど、それと同時に是等の全領域に共通する性格といふものが正しく把握され、是等の領域を対象とする綜合的な文化問題、文化事業、文化運動といふものが、時代の要求
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