ゐないといふことは、日本の「文化」を正しく育てるうへに於て、見逃すべからざる欠陥であります。
 そこで、児童に関する学校教育以外の「文化」機構を、国民運動の一環として整備し、これを強力に推し進めるために、少国民文化協会なるものが生れたのであります。
 この協会の活動によつて、例へば玩具なら玩具のほんとの「文化」価値が国家的な立場で考へられ、道徳的、科学的、芸術的な観点から、少国民の育成に最も適した、立派な玩具の製作配布が企図せられるでありませう。

 国民組織としてこれも最近結成をみつゝある地域的職域的な団体、産業報国会、商業報国会、青少年団、日本婦人会、翼賛壮年団等は、いづれも文化部またはそれに相当する部を内部機構としてもつてゐますが、なかには、「文化」といふ意味を非常に窮屈に解し、または著しく軽く扱つてゐるところがあります。市町村等の自治行政機関の内にも、やはり文化部或は文化課といふ部門を作る傾向が現れて来ましたけれども、これまた、名前と実際とがどうも釣り合はないやうなものが間々見うけられます。
 極端なものになると、「文化」即ち「娯楽」といふ風に考へてゐるのではないかとさへ思はれ
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