欲するところは決してさうではなく、出版事業は、国民に最も健全かつ潤沢な精神的栄養を提供し、各種専門領域の最も価値ある著作物の円滑な刊行を主旨としなければならぬのであつて、これ即ち、一国の「文化」を向上発展せしむべき重要な機能を分担する業務なのだといふ自覚が、この名称となつて現れたのであります。最近この団体は国家の統制が強化され、純然たる統制会として日本出版会といふ名称に変りました。
「音楽文化」といふ名称も亦同様な意味を含み、音楽は単に芸術として個人的に制作され、一部のものに鑑賞されることによつて一種社会的孤立の状態に陥つてはならぬ。ひろく「文化」の立場から、音楽家自身の心構へを改めて、真に日本人の心を心とした音楽、深く時代の要求にこたへた力強い音楽の創造を目指し、かゝる音楽を国民全体のものとするやうな運動の展開を音楽家自身の使命と考へることがこの団体の精神であります。
「少国民文化協会」については、その結成の由来を少し述べてみたいと思ひます。
もともと、児童を対象とする読物、絵本、玩具、紙芝居、演劇映画といふやうなものについて、専門的な研究をしてゐる人、または、それらの製作に当つて
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