もなほ広汎と云へば広汎でありますが、「文化」と「思想」とは切離すことができないものであり、また、「厚生」とは国民生活を豊かに健全ならしむる方策でありますから、これまた、「文化」といふ角度からこれを取扱はなければ、綜合的な効果は挙げられないのであります。一例を人口問題にとつてみても、これは健民運動として官民一体の運動が進められてゐますが、その事務は、翼賛会では厚生部の所管でありますけれども、運動の実体は、文化部関係の職域を動員することが最も肝腎なのでありまして、かういふ風に、「文化部」の仕事を見て行くべきだと思ひます。

 それから、出版文化協会、音楽文化協会、少国民文化協会、宣伝文化協会などといふ団体が新たに結成されました。
 出版に関する統合団体を出版文化協会と、故ら「文化」の名称を冠したところに、専ら時代的な意味があると思ふのですが、それは申すまでもなく、これまでの出版界は、好むと好まざるとに拘らず、多かれ少かれ、自由主義経済の波に乗つて営利主義、投機主義、宣伝第一主義といふやうなものに支配され、少数の良書が多数の悪書によつて駆逐されまじき勢ひにあつたのであります。ところが、国家の
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