十分諒解し得ると思ひますが、これを混合して使つたり、また使はれてゐる意味を取違へたりすることによつて、今日のやうな現象が生れてゐるのだと思ひます。
 先づ第一に、今度文部省教化局に文化施設課といふ一課が設けられました。これはお役所のことですから、十分慎重に名称の詮議が行はれたことと思ひます。それにも拘らず、この文化施設課の所管範囲は、演劇、映画、博物館、図書館等に限られてをり、それ以外の文化施設は、他の部局の所管になつてゐます。
 更に、大政翼賛会に文化部があります。これは以前は組織局に属してゐましたが、組織局が実践局と変り、その実践局に、新たに、厚生部が設けられ、従来の文化部の仕事が一部その方に遷されたわけであります。その上、錬成局に思想部といふ部が別にでき、文化部から「思想」に関することはそつちへ移管されたかたちであります。さうすると、文化部には何が残るかと云へば、学術、文学、芸術、それに、さういふ部門を包含する出版、放送といふやうな事業職域関係、図書館、博物館などの文化機関、それと、国民生活の文化面、教養、娯楽、風俗、習慣といふやうな方面の問題だけといふことになるわけです。これで
前へ 次へ
全47ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング