教養」を身につけることだといふ、今日一般に通用してゐる言ひ方もこゝではじめて間違ひないことになるのであります。「教養」と「文化」とはいはゞ手段と目的といふやうなものであつて、教養が深いといふことは、自ら高い文化を身につけてゐるばかりでなく、一国の文化を代表し、これを指導する役割をもつてゐることを意味してゐるのであります。
これまで、「文化人」といふ妙な言葉が使はれてゐました。「知識人」とか「知識階級」とかいふ言葉の内容とも違ひ、これは、一般に精神労働とも称せられる仕事に従事する思想家的傾向のある学者、文学者を含む著述家、芸術家等を主に指すやうでありますが、時には、そのほかの職業に従事してゐるものでも、特に読書家であつたり、多少高級と思はれる趣味を解し、わけても文学芸術の愛好者であるといふやうな場合、これを「文化人」と呼ぶ習慣もありました。
殊に注意すべきは、「文化人」と云はれるためには、多少、どこか西洋臭いところがなければならぬといふ漠然とした感じがあつたことであります。つまり、西欧的な教養と、「近代的文化」といふこととは、切離すことのできないものでありました。
以上は、「文化」
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