が湧くことを告白したものでありますから、さういふ印象を人に与へ得る人物は、風体や社会的地位や教育のあるなしは問題でなく、無意識にでも自ら恃むところがあるためにこそ、おのづからな品位を備へたと云ひ得るのであります。万一、これが正直を衒ひ、少しでもそれを売物にするやうな人物であつたならば、決して、「神様のやうに」といふ形容は用ひられますまい。正直は正直として一応は感心できても、そこになんとなくわざとらしいもの、けち臭いものがあれば、それは、その人の品位を高めることにはなりません。これが、云ふに云はれぬ品位なるものの性質であります。
 真の「文化」と「似而非文化」との区別は、なにを例にとつても、この「品位」のあるなしで分れるのでありますが、国民の一人々々が、真の文化を身につけてゐたならば、おのづから、その言動、風貌にそれが滲みでて来ます。大東亜の指導民族を以て任ずるわれわれ日本人は、武道に於ても古来重んぜられたこの「品位」なるものを、社会万般の活動を通じて、益々発揮しなければ、将来異民族の信望をかち得ることは断じてできないのであります。
 この意味に於て、日本人の品位は、先づ第一に、日本人た
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