事を含む個人または集団の生活が先づ規律正しくなければなりません。仕事のしかた、生活のしかたが上手でなければなりません。これには技術の工夫錬磨が必要です。無駄を省き、計画的に労力と時間を使ひ、順序を正確に踏まなければなりません。適度の休養も取らなければなりません。明朗な気持を持ち続けることも大切です。
 身体の健康は、平時に於ても等閑に附してはなりませんが、特に戦ふ国民として是非とも最高度に保たなければなりません。
 それがためには、病気にかゝらぬ衛生上の注意以外栄養の摂取と適度の鍛錬が必要です。第一に、われわれ日本人は、もつと「健康のよろこび」についてはつきりした自覚をもたなければなりません。からだが丈夫でないことを望むものはゐない筈ですが、さうかと云つて、ほんたうに「健康」といふことを楽しい仕合せなことだといふことを身にしみて感じ、健康の上にも健康を願つてゐるものがいくたりありませう。これはつまり、国民の「健康観」といふものがしつかりできてゐない証拠で、これでは国民の体力を十分に引きあげることはできません。
 従来、肉体的健康といふことは、どうかすると精神的な能力と比例しがたいやうな
前へ 次へ
全47ページ中19ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング