売買をしてゐるのでないことは勿論、「物」を作るのでもなく、若し、頭髪に「加工」するとすれば、これは人間の身体の一部ですから、整形外科の医師の仕事に近いわけであります。医師は立派に文化的職域に属してゐるのですから、衛生上の必要からと外容を整へる目的とで成り立つ理髪業も、それに準じて少しも可笑しくはないのです。
そこで、文化新体制とはどういふことをいふのかといへば、これらあらゆる職域の者が、自分の利益のみを追はず、国家目的に最も適つた仕事ぶりをするやうに心構へを改め、かつ、さういふ風に仕事ができる完全な組織を作り、一歩進んで、国民全体の「文化」を向上させるために、それぞれの立場で全力を尽すやうな姿勢を整へることであります。
[#7字下げ]四[#「四」は中見出し]
国民生活を「文化」の現れとしてみる時、国家の理想を基礎とし、正しい伝統の精神を根深く宿したものであることを前提として、私はなほ三つの面からこれをみなければならぬと思ひます。第一に、「能率」があがつてゐるかどうか? 第二に、心身ともに「健康」であるかどうか? 第三に、「品位」を保つてゐるかどうか?
能率をあげるためには、仕
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