これで大体「文化」といふ言葉の解釈は尽きたやうです。
 近頃、この言葉はあちこちでやゝ乱雑に使はれてゐますから、よほど注意しないと、なんのことかわからない場合があります。
 それをこゝで少し拾つて、説明のつくものは説明をしておきませう。
 先づ近頃「新体制」といふことが云はれてをります。云はれるばかりではない。着々、実現してゐるのでありますが、これは国家機構のすべてに亘つて、国防上必要な、従つて永久にわが国土と国民生活を揺ぎなきものとするための新しい改革を行ふことでありますが、これを政治と経済と文化の三つの面から考へて、それぞれ、新体制の機構を作つてゆかうとしてゐるのであります。
 そこで、政治と経済の機構については、例へば政治は、政党が解消して新たに翼政会といふ単一政事結社が出来、行政官庁の整理改廃等が行はれ、経済界は経済界で、重要産業に関する統制会が出来るとか、中小商工業の転業問題に手をつけるとか、いろいろの動きがあります。そしてその範囲もわりにはつきりしてゐるのですが、文化機構といふことになりますと、どうもその範囲が茫漠としてゐて、なかなか纏りがわるいのです。ごく大ざつぱに云へ
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