のしたやうなものが多い。枯淡の境地が生れる所以であります。
言葉も亦ひとつの技術でありますが、西洋の言葉と日本の言葉とを比べてみると、まつたくその発達のしかたが違つてゐます。日本の言葉くらゐ、直接に思想感情を現さないやうにできてゐる言葉はありません。言葉に生々《なま/\》しさといふものがなく、余韻が深く、それだけに、不用意に使ふと誤解され易い言葉であります。言葉の質の高さはたしかにフランス語などに劣るものではありませんが、惜しいことに、あんまりむづかしすぎます。今のまゝでは超国境性に乏しい。特殊な時代に、特殊な環境の下に使はれる言葉としては、非常に高級な言葉なのです。
かういふ風に、「精神と技術」の問題を考へてみても、「文化」の高さといふものが、その二つの結びつき方によつてきまるとも云へます。「精神文化」と云ひ「技術文化」と云ひ、それは研究の対象として一つの角度を示すに過ぎず、文化の本質的価値は、この二つの角度からそれぞれ実体を見究めたうへ、更に、この二つの面の結びつき方に十分の注意を払はなければ、決して正確に測り知ることはできません。
[#7字下げ]三[#「三」は中見出し]
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