二千法以下の収入しかない俳優には、舞台用の現代服も劇場から支給する。時代服、職業服、並に様式服は勿論のこと。
 月千法以下のものには、舞台用の靴、靴下、シヤツまでも支給する。舞台用と限つてあるからには、それを着けて外へは出られない。少々不便である。

 病気又は懐姙の場合は、之を理由として俳優を解雇することは出来ない。
 懐姙の為め休業中は、一日十五法以上の手当を給料の代りに与へる。
 病気は、十五日間を限り、これまた給料の代りに十法以上の手当を給する。

 或る寄席(ミュジク・ホオル)で、一人の歌劇女優を傭入れた時、その契約書に、こんな文句を書き入れてあつた。
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「×夫人は、閉幕後と雖も、午前二時まで劇場に在るものとす。
夫たる×氏は、閉幕と同時に、如何なる事情あるも劇場を退去すべきことを契約す」
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 乱暴ですね。言語同断ですね。

 既婚の婦人は夫の認可なくして劇場に傭はれること、また劇場側から云へば、傭入れることは出来ない法規がある。

 十三歳以下の子供は舞台に立つことを許されない。

 俳優は、新作の上演に当つて、その稽古の程度不
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