シミスムと、あり余る皮肉とを、軽妙な理智の遊戯に託して、冷たい花びらの如く人の頭上に振りまくのである。
 彼の作には相当「一夜漬け」が多いやうにも思はれるが、何時読んでも、何時観ても面白いものに、例の『ブウブウロシュ』それから『署長さんはお人好し』『我家の平和』『真面目なお華客』等がある。(上記の諸作は最近に翻訳を発表する予定である)

     二、自由劇場没落後

 自由劇場の運動は、たまたま自然主義的傾向の露骨さによつて、次第に人心を離反させた。
 而も一方、既に、ヴェルレエヌ、ボオドレエルの名が詩壇を風靡し、象徴派の運動が漸次活気を呈し、ワグネルの演劇論が、舞台革命家の興味を惹き始めてゐた。
 やがて、同語国たる隣邦白耳義に、神秘主義の大旆をかゝげて、『闖入者』の作者モオリス・マアテルランクがあらはれる。
 ポオル・フォールは自由劇場に対抗して芸術座を起し、詩劇の復興を宣言して、大いにリリスムのために気を吐かうとする。(制作劇場《メエゾン・ド・ルウヴル》の前身)
 此の機運に乗じて、一躍、劇壇の視聴を集めた作家にエドモン・ロスタンとポオル・エルヴィユウとがある。
 十九世紀の黄
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