ゥニ・アミエルとオベイ(『にこにこしたブウテ夫人』)、ブウサック・ド・サン・マルク(『ギュビオの狼』)、フォーレ・フレミエ(『混乱の吐息』)、マルシアル・ピエショオ(『パスカル嬢』)、レイナアル(『心の主』『凱旋門下の墳墓』)、クロオド・アネ(『ブウラ嬢』)、アンリ・ゲオン(『階下の貧者』)、アンドレ・ジイド(『サユル王』)等は、それぞれ興味ある作品を発表して新しい問題を提供した。
 度々引合ひに出たヴィユウ・コロンビエ座の首脳ジャック・コポオも、最近、『生れ家』といふ処女劇作を発表して、批評家をアツと云はせた。それは、スカンヂナヴィヤの肉に仏蘭西のソオスを掛け、フラマンの胡椒を振つたやうなものである。イプセンドベリイコポオランクである。しかし、流石に一世の舞台芸術家である。家族制度の悲劇を主題として陳套に陥らず、各人物の性格的対立も、極めて鮮やかな表現に達し、その結構の手堅さ、わけても彼独特とも思はれる微妙な対話のリズムが、此の戯曲をして、傑作の名を擅にさせる所以であらう。兎も角も、此の一作は最近の仏国劇壇に大なるセンセエションを起したのみならず、コポオの名をして、益々光輝あるものと
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