科学者にして哲学者を兼ね、「網膜に依らざる視覚」の生理的発見によつて学界を驚かした詩人ジュウル・ロマンは所謂「ユナニスム」の唱道者である。大戦前、戯曲「都市占領軍」を発表して劇作家としての第一歩を踏み出した。「ユナニスム」に関する詳論は此処でする暇はないが、要するに、群集の心理活動、共同意志の世界を対象とする一種の芸術的立場を指すので、処女作『都市占領軍』は戯曲として欠点の多いものであるが、戦後ヴィユウ・コロンビエ座で上演した『クロムデイル・ヴィエイユ村』は、多くの批評家によつて殆ど黙殺されたにも拘はらず、演出者ジャック・コポオは、これを以て偉大な劃期的作品が屡々遭遇する運命なりとした。その後『放蕩の虜になつたツルアデック氏』及び『クノック』『ツルアデック氏の結婚』の三作は、軽妙なファンテジイと辛辣な諷刺によつて、作者の多面な才能を示すものとして劇壇の注目を惹いた。
彼は、ヴィユウ・コロンビエ座附属演劇学校長として、詩学の講座を担任し、なほ演劇に関する公開講演を行つてゐる。
驚嘆すべき幻想の詩人、透徹した人生の批判者ジョルジュ・デュアメルは、『戦ひ』『彫像の影に』の二作を以て、クロ
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