の細部はどうであるか、場面場面の色調はどうであるか。
 女どもが登場します。互に名を呼び合ふのでありますが、その名は、「頬張月」「エリザ」「プウレット」、それから「ぶつた斬りのマリイ」
 会話が交換されます。そして、話が例の兵士のことに及びます。「さうさ、あたしや好きだよ、あの男……。あの人のためになら、からだをコマ切りにされてもいいよ」エリザがかう云ふと、先程ミルラン君も引用されたとほり、今度はプウレットが、「こいつあ、をかしいや。お前がそんなだつてこた、夢にも知らなかつたね、誰かにのぼせちまうなんてさ……。だつて、今まで、お前のつていふのが一人でもゐたかい……。」(「モウそれでいい」「わかつた、わかつた」「ヨシヨシ」など呼ぶものあり)
 議長――文部大臣の演説を最後まで聴かれるやうに……。
 文部大臣――この句は後を読まずにおきます。先程ミルラン君が読まれましたから……。然し、ミルラン君は、その後の返答を読まれませんでした。「さうぢやないんだよ……あの人とだつて、ほかの男とだつて、あたしや、一度も……。それがだよ、あの人だけはあたしんとこへ通つて来て欲しくない、さう思ふほど、あの人
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