、なかなかの騒ぎ。文部大臣も遂に見兼ねて、演壇に立ち、「アルガン君は、若い劇作家が、自由劇場によつてのみ、その才能を世に問ふことができるといふ事実に、お気付きないか」と食つてかかる。左翼の議席から拍手が起る。「もちろん、なかには良くないものもある」と云ふと、アルガン君すかさず、「皆良くない」とやり返す。大臣は「皆ではありません。しかも、今日まで上演した脚本の中には、なかなか注目に値するものが多いのであります……」そして遂に、「若し、諸君が、本案を否決されるやうなことがあれば、わが劇芸術のため由々しき大事であることを警告したいと思ひます」と見得を切り、遂に投票採決の結果、原案は無事通過。
★
越えて、翌年の一月二十四日、自由劇場はまたもや、今度は、下院の議場を賑はした。即ち、議員ミルラン君が文部大臣に宛ててなしたる質問演説から始まる。
ミルラン君は当時売り出しの少壮弁護士、最近まで仏国共和国大統領の椅子に在つた現代有数の政治家であることは、読者も既に御承知のことであらうと思ふ。
時の文部大臣は、これも最近まで上院議長の職にあつたレオン・ブウルジュワ君である。そし
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