舞台の言葉
岸田國士
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)所謂《いわゆる》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)心理的|韻律《リズム》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
−−
舞台の言葉、即ち「劇的文体」は、所謂《いわゆる》、白《せりふ》(台詞)を形造るもので、これは、劇作家の才能を運命的に決定するものである。
普通「対話」と呼ばれる形式は、文芸の凡《あら》ゆる作品中に含まれ得る文学の一技法にすぎないが、これが「劇的対話」となると、そこに一つの約束が生じる。それはつまり、思想が常に感情によつて裏づけられ、その感情が常に一つの心理的|韻律《リズム》となつて流動することである。甲の白が乙の白によつてより活かされてゐることである。「心理的飛躍に伴ふ言葉の暗示的効果」が、最も細密に計画されてゐることである。
これは、「自然な会話」と何も関係はない。この「自然な会話」が、「劇的対話」と混同されたところに、写実劇の大きな病根がある。殊《こと》に日本現代劇の大きな病根がある。「自然な会話」の総てが
次へ
全13ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング