剰に陥る場合ですけれども、これは誰でもあることで、別に不思議なことではない。羞んだりてれたりしない人間は恐らく一人もいないでしょう。これは別に問題にはならない。殊に若い女の人の羞みというものは、極く自然な美しいものとされています。男の人でもてれるということは、なかなか愛嬌のあるものです。しかし、この羞みも照れるも、極端になると始末がわるい。日本人くらい、その点で、ひどく羞み、照れる国民はないのです。これは日本人が、世界のどこの民族に比べても、自意識が多すぎるという証拠です。
そこで、日本人全体を標準にして考えると、適度な自意識をもつということが先ず必要ですが、俳優の場合は、更に、普通の人よりは少しくらい自意識が少くても構わない。つまり自意識が過剰に陥ることがない為には、普通の人よりも、少しくらい自意識が少くても構わない。つまり自意識の過剰に陥ることがない為には、普通の人よりも自意識が幾分少くても、それほど、その俳優の欠点にはならない。これは勿論、舞台の演技を中心として云っているのです。舞台に立つうえから、どうしても自意識過剰が邪魔になる。しかし、日常の行動や素行というような問題で、一
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