密接な関係があります。
 そこで第三に必要なのは観察力ですが、この順序は重要ですから、はっきり憶えておいていただきたい。一番大切なのが感性、その次が想像力、それから今度の観察力です。極端な場合ですけれども、想像力も観察力も非常に貧弱である。或は殆どそういうものがないというような俳優で、感性一点張りで役者をしている相当な役者がいます。ここで名前をいうと悪いからいいませんが、日本の旧劇の役者では相当な名優といってもいい役者でありながら、想像力と観察力は殆んどゼロ、一般の社会の人の中以下であって、ただ感性というものだけがずば抜けて高い。その為にああいう芸をちゃんと身につけて、而もそれを立派に護り育ててくる。そういう人がいる。殊に歌舞伎のような芝居では、それである程度いい。だが、ここで話しているのは、歌舞伎の俳優を標準にしているのではありません。そこをはっきりさせておいていただき度い。芝居の種類によって、俳優に必要な精神的能力、素質というものがまた多少違いますが、しかし、一般俳優というものについては、そういう順序が大切なのです。
 想像力は実際目の前にないものを想像する。しかし、観察力というも
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