うことは、他の普通の人よりも、鋭くそうして豊かでなければならないということであります。これが第一です。
 第二は想像力。
 想像力というのは、言葉どおり、ものを想像する力です――空想とはちょっと違いますが、これは英語ではイマジネーションといいます。普通ものを想像するというと、誰かと会っていろいろな話をしている。あの人はあんなことをいっているけれども本当はこうなんだろう。あの人は私にあんなお世辞をいうけれども、おなかの中では軽蔑しているのだ。そんな風に、相手の気持をいろいろ推測してみる。或は旅行をしようと思う。例えば、京都なら京都へ行くとすると、今頃の京都はさぞ青葉で美しいだろう。行ったことがある人なら、京都では例えば嵐山の景色を想像する。仮りに言葉の頃でなく花時に行った人なら、花の頃の嵐山を頭に浮べて、花が川の水に映って非常に明るい光に満ちていた。その嵐山が今は青葉が水に青く影を映しているだろう。そういう一つの風景の想像ということもある。また今日誰かに会おうとする。どこかで待ち合わしてそこで会う。一体何んの用だろう。何時どこそこに来てくれというので、これから行くのだが、あの人はなんの用
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